道路工事やインフラ工事の周辺で見かける警備員は、「交通整理」がお仕事だと思っていませんか?
実は、警備員が行っていることは、「交通整理」ではなく「交通誘導」なのです。
ここでは、一般的に使われている「交通整理」と「交通誘導」の違いと、それぞれの仕事内容を比較していきます。
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目次
「交通整理」と「交通誘導」の違い 警備員のお仕事
そもそも「交通整理」とは、車両や人が行き交う道路・交差点で、信号機や手信号などにより交通を円滑にする行為の事を指します。
停電や災害、大きな事故があった場合、この交通整理に配属されるのは基本的に警察官、交通巡視員です。
警察官、交通巡視員が行う「交通整理」は、道路交通法の【警察官等の交通規制】にて定められており、法的拘束力があります。
つまり、警察官、交通巡視員が「交通整理」を行っている中、それに反する行為・行動を起こした場合は、違反の対象になり反則金の支払いや減点になる可能性が高いという事です。
それに対して、「交通誘導」とは、工事現場や建築現場、イベント会場付近など、人や車両が集まりやすい場所で、事故・事件防止を務める為の民間警備会社の業務を指します。
交通誘導を業務にする警備員を「交通誘導警備員」又は「交通誘導員」とも呼んでいます。
警備員が行う「交通誘導」は、研修・講習を受講した警備員が、通行者や車両を円滑に誘導出来るよう、任意的な協力を要請する行動をします。
つまり、交通誘導員の行動は、あくまで協力要請であり、法的拘束は無いという事です。
これにより、「交通整理」は警察官・交通巡視員が行う法的拘束力がある行為を指し、「交通誘導」は警備員が協力要請を行い、あくまで法的拘束力は無い行為なのだとわかります。
どちらも行為の範囲なので、使い方の決まりは絶対ではありませんが、一般的に「法的拘束力が無いのが交通誘導」という括りになっているのは事実です。
※交通巡視員とは…警察官と交通整理を行う、警察職員の事を言います。特に階級は無く、拳銃や手錠の携帯は出来ませんが、違反等の反則告知は職務内に含まれています。(都道府県によっては、廃止されている所もあります。)
交通誘導員が気を付けることは?
法的拘束力がある交通整理(規制)が出来ないにしても、警備員の配置は必要な事です。
交通誘導員がいないと、街中では事故・事件が多発し、工事や建築作業が困難になってしまうでしょう。
現場に配置された交通誘導員は、交通ルールに乗っ取って業務をこなさないといけないので、ある程度の知識が必要になってきます。
それでは、具体的にどんなことに気を付ければいいのか、例を挙げて紹介していきます。
まず、交通誘導員が第一に気を付けないといけないのは、自分の身の安全です。警備員は車を徐行、停止させるなど危険性の高い場所に常にいるからです。自分の安全性が見えていないことは、周りが見えていないことと繋がります。常に客観的に注意力を装備して自分を守ることも仕事なのです。
通行人や走行車が止めどなく流れてくる場合は、常に気を張りながら誘導しなければいけませんが、同じ動きが多くなりやすい為、何も考えずに動作だけになってしまう恐れがあります。しかしそういった緩みが、大きな事故・事件に繋がる事もあるのです。また、配属場所によっては、殆ど通行者がいないところもあります。手持ち無沙汰でボーっと立っているだけ、と見られてしまう事も…。危険を防ぐ為に存在しているのに、咄嗟のことで動けない、なんてあってはならない事です。集中力が保てるよう、自分なりに工夫して仕事をするのがプロと言えるでしょう。
仕事をする上では全てにおいて当て嵌まりますが、警備員の場合は体調管理を疎かにすると、現場の危険度が一気に上がってしまいます。体調が悪い中、警備の仕事をするのは、不可能と言っても良いでしょう。例えば、高熱が出ているのに工事現場付近で交通誘導をした場合、頭痛やめまい、寒気を我慢している状態で、通行人、車両、自転車を同時に的確な判断で誘導するのは、よっぽど慣れている人でも無理です。体は動かせるかもしれませんが、そんな状態で冷静に状況判断が出来るとは言えないでしょう。体調が悪いのであれば、すぐに会社へ報告し、現場の安全性を考えることも大切です。
目に見える全ての情報で予測をしながら誘導するには、視野を広くするのが必要不可欠です。安全性の高い誘導を心掛けるのも大切ですが、こうすると事故が起こるという最悪のケースも頭に入れておかなければなりません。また、コーンの位置や工事に使用する機材の場所を把握し、必要に応じて場所を変えるなど意識を向ける場所は沢山あります。立って誘導棒を振っているだけでは、警備の仕事とは言えません。
警備の仕事は、言い方を変えるならサービス業にも値します。現場の警備員同士のコミュニケーションはもちろん、通行人や車の運転手など、信用と信頼をしてもらえ無ければ、円滑な誘導は出来ません。ただでさえクレームが多いとされている交通誘導警備は、コミュニケーションを取る際にも慎重に言葉を選ばないと渋滞に繋がってしまいます。ある程度の接客は理解していないと難しいかもしれません。
警備員が行う「交通誘導」とは
基本的な誘導は「徐行を促す」「停止させる」「進行を促す」この3つです。
それは、工事・建築現場でもイベント会場付近でも同じで、人や車両が事故無くスムーズに通行出来るようこの3つを使って誘導します。
交通誘導場所の例
道路工事による車両誘導の場合
・片道通行の区間
・限定した区間の道路を通行止め
建築工事による車両誘導の場合
・工事現場の出入り口付近
・工事現場の敷地内
商業施設、イベント会場付近の交通誘導
・歩行者安全確保の為、横断歩道や信号機付近
・駐車場内、または出入口付近
警察官・交通巡視員が行う「交通整理」とは
交通整理で手信号が実施される場合というのは、
・災害、停電などで信号機が機能しなくなった場合
・事件や事故で信号機に従うべきでは無い場合
となります。
警察官・交通巡視員が交通整理をしている場合、信号機と異なった手信号をしていても、手信号の方が優先となります。万が一、手信号を無視して走行した場合、信号無視の違反となる可能性があります。
手信号の意味
警察官は灯火を利用して、手信号を行う事もあります。
▽青信号
警察官が腕を平行に上げている状態で、体に対して平行に通行する場合
▽赤信号
・警察官が腕を平行に上げている状態で、体が車の正面を向いている場合
・警察官が腕を垂直に上げている状態で、体が車の正面を向いている場合
▽黄色信号
警察官が腕を垂直に上げている状態で、体に対して平行に通行する場合
まとめ
警備員は交通整理が仕事、という何となくのイメージは間違っていませんが、法的拘束力を持っているか持っていないかで、「交通整理は警察官、交通巡視員」「交通誘導は警備員」と区分した方がわかりやすくなります。
それは、「警察官が交通整理をやっているから守ろう」「警備員だし別に守らなくてもいいや」と偏った考えを促す為のものではなく、それぞれの現場付近で事件、事故をおこした運転手の責任が問われる際に関わってくる問題なのです。
警備員の誘導ミスで事件事故が発生してしまった場合、警備側への損害賠償は高い確率でありますが、運転手も安全確認が義務付けられている為、全く責任が無いとは言えません。
警備員の誘導に不安を感じた場合、運転手も安全確認をすることで、なお事故を防ぐことに繋がります。
警備員は、通行するすべての人の協力者なのです。