警備員が守るべき法律「警備業法」とは?

「法律」は国の秩序を保つために、国民が守らなければならないルールです。
警備員にも「警備業法」という法律があり、警備会社やここで働く警備員はこの法律を守りながら働かなければなりません。
今回は、「警備業法」の成り立ちをはじめ、どんなことが書かれているか、よくある違反などを解説していきます。

警備業法はなぜできた?

警備業法が施行されたのは1972年(昭和47年)のこと。
施行された経緯を説明するには、まず日本の警備業の始まりを説明しなければなりません。
警備業法の施行の10年前、1962年(昭和37年)に「日本警備保障株式会社(現在のセコム)」が設立され、初めて日本に警備会社が生まれました。
当時の日本では「水と安全はタダ」と呼ばれており、世間では警備業という職業は受け入れられてなかったと言います。
しかし、その2年後の1964年(昭和39年)、東京オリンピックが開催され、選手村の警備を民間会社が行ったことにより、多くの人に警備業が認知されるようになります。


その後は、高度経済成長期の会社増加による警備の人手不足や、3億円事件の影響における現金輸送警備の増加など、様々な時代背景のもと警備の需要が増し、警備会社の数は年々増えていきました。
その中で、悪質な警備会社の増加や警備員による不祥事などが相次ぎ、警備業の信頼性が落ちる事態が発生したため、1972年に警備業のルールとも言える「警備業法」が施行されました。

ケビーボ君
ケビーボ君
法ができる前は、警備員による落とし物の窃盗、警備を騙った暴行などが相次いだらしいデス…

警備業法とはどんなもの?

前述のような経緯があって生まれた警備業法ですが、その内容はどういったものなのでしょうか?
要点を抑えながら見ていきましょう。

どんなことが書かれている?

警備業法は第一章〜第八章から成り、各章には警備を行う上での決まり事が書かれています。

【第一章】総則(第1条~第2条)
全体に共通するルールが書かれています。

【第二章】警備業の認定等(第3条~第13条)
警備業に該当する企業や警備員になれる人などについて書かれています。

【第三章】警備業務(第14条~第20条)
服装・持ち物、警備業務の契約関係などについて書かれています。

【第四章】教育等(第21条~第39条)
警備業を行う上で必要な教育などについて書かれています。

【第五章】機械警備業(第40条~第44条)
機械警備業を行う上でのルールが書かれています。

【第六章】監督(第45条~第51条)
国家機関への報告・決まり事などについて書かれています。

【第七章】雑則(第52条~第55条)
各条例に関する補足事項などが書かれています。

【第八章】罰則 (第56条~第60条)
各条例を違反した場合の罰について書かれています。

どのような警備業務が対象になる?

警備業法では、他人の需要に応じて行う業務を「警備業務」とみなし、1号〜4号に区別して法律を適用しています。
この分類については、警備業法第2条に記載があります。

・1号警備業務
事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地などにおける盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務です。一般的に“施設警備”と言われる警備のことを指します。仕事内容は施設の巡回や出入管理、機械警備などの業務も1号業務にあたります。

・2号警備業務
人若しくは車両の雑踏する場所、またはこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止します。いわゆる“交通誘導警備”や“雑踏警備”などが2号業務にあたり、工事やイベント時に混乱が起きないよう誘導業務等を行います。

・3号警備業務
運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務です。“貴重品輸送警備”がこれにあたり、“核燃料物質等危険物運搬警備”も3号警備に含まれます。

・4号警備業務
人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止します。俗にいう“ボディガード”と呼ばれる警備業務です。社会的な地位が高い人や有名人、ストーカー被害を受けている人など、明確な警備対象がいるのが4号警備の特徴です。

警備員になれない人は?

警備業法の第3条では、警備員になれない人の条件が記載されており、「欠格事由」とも呼ばれます。
第3条の概要は以下の通りです。

・18歳未満の方
・成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者
・禁錮以上の刑や、警備業法違反罰金刑での執行を終わる等して5年を経過していない
・最近5年間の間に警備業法に関わる違反をした者
・単独・集団に関わらず暴力的行為等で警備業の掲げる規則に抵触する可能性がある者
・暴力団(反社会勢力)などと関わりのある者
・アルコールや薬物(麻薬・覚せい剤)などの中毒者
・精神疾患などで業務を正確に遂行するのが難しい

警備員になる前に研修が必要

雇用形態問わず、警備員として働くには「警備員教育(新任/現任教育)」を受ける必要があります。

これは警備業法で決められており、基本教育と業務別教育のトータル20時間の研修を受けなければなりません。
基本教育では、警備に関連する法令の勉強や警備員の基本動作などを、義務別教育では、施設警備・交通誘導など実際の業務に関連した内容を学び、ようやく警備員として働くことができる訳です。
また、警備員になってからも年度ごとに10時間の「現任教育」を受ける必要があります。
この現任教育では、法律の改正など新しい知識の習得、警備の質を高める技能の向上などを学び、新年度も正しい知識で警備のプロとしての活動が行えるよう、アップデートしていくのです。

服装や持ち物も決められている?

第16条と第17条では、「服装」と「護身用具」について書かれており、法令に基づいた物を身に付けなければなりません。

・服装
「服装」は、閣府令で定める法令に基づいて定められた制服を着る必要があり、なおかつ制服の色や形など詳細を記入した「服装届」を、都道府県の公安委員会に届け出する必要があると書かれています。
制服のデザインは警備会社によって多少の異なりがあるものの、目的は一般の人が警察官や自衛隊などと警備員の違いを分かるようにするものです。

・護身用具
警備員の護身用具と言えば、「警棒」を真っ先に思い浮かべる人は多いと思われますが、実は「警棒」はいつでも持てる訳ではありません。
警備業法では、「公安委員会が公共の安全を維持するため必要があると認めるときは、都道府県公安委員会規則を定めて、その携帯を禁止し、又は制限することができる」とあるので、本当に警備に必要な時だけ携帯が許可されるのです。
原則護身用の道具ですので、交通誘導警備や雑踏警備などの危険性が低い現場では、不要と判断され所持できないことが多いですが、機械警備や施設警備、現金輸送警備や身辺警護など、より危険性の高い現場では、所持を許可される傾向にあります。

よくある法令違反は?

様々な警備の決まりが記されている警備業法ですが、意図せずに違反してしまうケースがあります。
よくある違反のケースを見ていきましょう。

警備員の違法派遣

この違反でよく見られるケースは、「自社の警備員の数が足りず、他社の警備員に応援にきてもらい派遣をした」というものです。
この警備業務についての労働者の派遣は“労働者派遣法違反”にあたり、「派遣した警備会社」と「依頼した企業」の両方に行政処分が下されます。
営業停止処分や指導教育責任者証の返納命令などを受ければ、様々な部分で支障をきたすことになり、事業自体に響く可能性すらあります。
そうならないためには、「依頼した企業」と「派遣した警備会社」「応援を頼んだ警備会社」で警備業務請負契約を結び、人手が足りない場合の準備をすることが大切です。

警備員に対する教育懈怠

教育懈怠(けたい)とは、教育を怠ることを指します。
こちらも人手不足が起こすケースですが、「新しい現場に配置する警備員の新任教育が間に合わず、教育を受けさせないまま現場に配置した」という事例が見受けられます。
違法派遣同様の処分が下される可能性があり、営業停止に関しては教育を受けている警備員の割合によって停止日数が変わってきます。
教育を受けている警備員の割合が「50%未満の場合は1カ月」、「50%以上70%未満の場合は14日間」、「70%以上90%未満の場合は7日間」、「90%以上の場合は指示処分」などとなります。
このケースを避けるためには、教育の管理を徹底すること、教育が間に合わない警備員については現場に配置しないなど、自社の事業規模をしっかり把握する必要があると言えるでしょう。

教育実施簿の虚偽記載

前述の教育懈怠にも関連してきますが、これは教育実施簿に「教育をした」と嘘をついた記載をしてしまったというケースです。
具体的に言えば、「立入検査に対応するため、実際には必要な研修を行わず、実施簿には教育をしたと嘘の記述をした」というのがこの事例にあたります。
罰金や営業停止処分に加え、警備業認定証の返却などの罰則が与えられ、最悪5年間は警備業に従事できない可能性もあります。
防止策としては、教育関係の管理の徹底化、教育実施簿の作成者へ日頃から指導をすることなどが挙げられるでしょう。

警備業法を理解してクリーンな警備員を目指そう!

“知らなかった”が大問題になってしまうことは、どんな物事にも起こります。
前項目で述べたように、それは警備業界でも起こることであり、常に学ぶ姿勢が大切となります。
警備業法の理解を深めれば、問題を回避することもできる上、警備のプロフェッショナルとして、より貴重な人材になれるのではないでしょうか?

警備求人を探してみよう!