救いようがなくて底に沈んでいるような“人・物事”を表すときに、“底辺”と表現することがあります。
これを仕事に置き換えたとき、“底辺職”という呼ばれ方をされますが、よく「警備員」もそれに該当する職業と言われます。
この記事では、「なぜ、警備員が底辺と思われてしまうのか」と「警備員が底辺ではない」理由についてご説明していきたいと思います。
底辺ってなに?
そもそも“底辺”とは何なのでしょうか?
通常、三角形や図形の下の辺のことを指しますが、これを社会構造やスクールカーストなどになぞらえて、一番下にいる最下層のことを表す一種の比喩表現です。
そのため、「これが底辺」と定義するのは難しいですが、社会人においての底辺とは「収入が低い」「誰でもできる」など、周囲から見下されてしまうようなことが該当すると考えられます。
その点、警備員はどうなのでしょうか?
某就職情報サイトが過去に公開していた「底辺の仕事ランキング」という、なんとも不名誉なランキングには「警備員」も入っていました。
このランキングには批判の声も多くありましたが、その職種に対して、人々がポジティブな印象を抱いていないということも否めません。
警備業が底辺と思われてしまっている理由
警備員のマイナスイメージとしては、「年齢層が高い」「給与が低い」などが挙げられます。
しかし、実際のところはどうなのでしょうか?
それぞれポイント別に見ていきます。
仕事内容へのイメージ
警備員といっても、「交通誘導」に「施設警備」、「要人警護」など様々な職種があり、それぞれで行う仕事も変わってきます。
その中でも、「ずっと立ちっぱなしで行う」「理不尽なクレーム対応」などの仕事イメージが特に悪目立ちしているように見受けられます。
しかし、これはほんの一部分にしか過ぎません。
他業種でも「理不尽なクレーム対応」はありますし、オフィスワークは逆に「基本座りっぱなしなので健康に良くない」というデメリットもあります。
その点、警備業は適度に体を動かして働くので健康的であり、目的も“人々の安全を守る”というシンプルかつ社会的意義のあるものです。
また、各自治体や条例により、道路工事は警備員の配置が義務付けられている場所が多く、インフラ事業やイベントを行う上では絶対に欠かせない存在です。
そのため、今後もなくなることのない業界と言えるでしょう。
ハードな仕事のイメージだけが先行し“底辺”と思われていますが、実際は業界的に安定しており、社会貢献度の高い仕事なのです。
警備業で働く人たちへのイメージ
働いている人の年齢層が高いことも1つの要因です。
「シフトの融通が利くこと」や「あまり年齢を問われない」などの理由から、定年後の仕事として選ばれることが多く、「最後に行き着く先=警備員」のようなイメージが定着してしまっているようです。
また、スキルや資格を必須としないので、“誰でもできる”と一括りにされやすい傾向にあります。
しかし、フェスやイベントなどの警備は、その場の雰囲気が楽しめる点や仕事内容がシンプルであることなどから若者にも人気があり、活躍する年齢層は現場によって様々です。
また、“何歳になってもお金を稼げる”という点は、将来を見据えると重要なポイントの1つとなってきます。
定年(60歳)後、25年間で必要なお金は1人あたり約3100万円と言われており、毎月必要な生活費は1人あたり約13万円とされています。
年金の平均支給月額は約14万7,000円ということですが、昨今の経済状況から年金支給額も年々減ってきており、年金だけで暮らすのは将来的に不安を感じることもあるでしょう。
そう考えると、「シフトの融通が利くこと」や「あまり年齢を問われない」などの待遇は悪くない待遇ではないでしょうか?
警備業であれば、年齢・経験不問の求人も多いため、いつでも始められますし、「シフト自由で週1日~OK」の待遇も多くあるため、自分が入りたい勤務日数でそれなりの収入を得ることができます。
※雇用条件は変動する可能性がございます。
今後の社会情勢なども考えれば、年金以外の収入源があることは大事なことであり、“底辺”という言葉だけでは片付けられないと言えます。
収入面へのイメージ
職種にもよりますが、警備員(正社員)の平均年収はおよそ340万~350万円とされています。日本人の平均年収は約433万円と言われているので、比較するとたしかに低いですね。
やはり、経験・資格不問で間口が広い分、1人あたりの単価が安くなってしまっていることが、年収が低い要因の一つのようです。
もちろん立場や職種次第で多く年収がもらえることもありますが、業界全体で言えば、高年収とは言い難いのが現状です。
しかし、短期間での勤務となれば話は別です。
全国のアルバイトの平均日給は9,600円ほどとされており、警備員の平均日給は11,000円ほどと高日給であることが分かります。
また、警備会社の中には「日払い」や「入社祝金」など、すぐにお金が手に入る待遇があり、短い勤務時間や少ない勤務数で高収入を得られるのが警備員の強みといえます。
人手不足解消の点から、給与の改善も徐々に行われて来ており、働きを還元できる環境作りに向けて進み始めています。
警備員は“底辺”ではない!
ここまでお伝えしてきましたが、良くないイメージだけが1人歩きしているのが、警備員が“底辺”と言われる要因と考えられます。
客観的に見れば、警備員は“人々の安全を守る”という誇りの持てる職業であり、私たちが安全に生活できているのは、そういう方々の働きあってこそです。
そもそも、この世に必要とされない仕事などなく、どんな仕事でも必ず意味があって、必ず求めている人たちがいます。
この“底辺”という表現は、人から見聞きした“偏見”でしかないのです。
重要なのは、イメージで仕事を選ぶのではなく、自分に合った仕事なのかをしっかりと見極めて働くことなのではないでしょうか?