気候の影響をモロに受ける警備現場。特に夏場の蒸し暑さや照りつける太陽は、現場で働く警備員の皆さんにとって悩みの種です。中には、熱中症を発症して「めまい」や「嘔吐」などで現場から離れてしまう方もいます。夏の警備現場では、暑さ対策も含めて業務の一環と考えて差し支えないでしょう。
それでは、警備現場での熱中症を防いで、夏場の暑さを無事に乗り切るためにはどういったポイントに気をつけるべきでしょうか。
以下、警備現場での暑さ対策や、暑さを防ぐための便利グッズ、そして夏場の警備現場で注意すべき点について解説していきます。
夏場の警備現場の実態
交通誘導警備やイベント警備など、屋外勤務が基本の警備員にとって、夏の仕事現場には他の職業には見られない特有の悩みがあります。
まず、「持ち場から移動せず、じっと立っていること(立哨)が仕事」という点です。ほかの職業であれば、そもそも「屋外の特定の場所に、移動せずに長時間立つこと」というシチュエーション自体が珍しい状況ではないでしょうか。警備員の場合、長時間その場に立たなければいけないことに加えて、動かずに姿勢を保って立っている必要があります。
実際の現場でも、夏場に施設の入り口で立哨している際、「持ち場があと1メートル横にずれていれば日陰なのに…」と思う方が多いのだとか。警備会社や現場にもよりますが、基本的には「休め」のポーズを維持していなければならないので、暑いからといって手でパタパタと顔を仰ぐこともできません。
さらに、警備員にとって夏の暑さが過酷に感じられやすい要因の一つとして、服装が挙げられます。警備員の制服は帽子や白手(手袋)など、夏場では体に熱がこもりやすくなる装備です。
最近は、熱中症対策として警備用の空調服を支給する警備会社が、増えてきており、服についたファンを通して、首などの温度を下げる工夫を行っているそうです。
あとは、バッテリーが切れないように充電を怠らないか、予備のバッテリーを用意するよう注意してくだサイ!
上記の点から、警備員はほかの職業以上に夏の暑さや熱中症への対策に気を使わなければならない仕事であるといえます。筆者の経験としても、熱中症で倒れてしまった仲間の配置を補うためにシフトの時間が伸びた経験が多々あります。元気に働ける時間を少しでも長く保つためにも、夏は暑さへの備えを怠らないようにしましょう。
警備現場の暑さ対策3選
暑さ対策を怠ると、仕事中に熱中症などの体調不良を起してしまう危険性があります。
ここでは、簡単に出来る暑さ対策3選をご紹介します。
暑さ対策①こまめな水分補給
夏の暑さと闘うなら、こまめな水分補給は絶対に欠かせません。
実際、30分に1度は水分補給する時間を設ける会社もあるそうです。
警備員の皆さんが休憩中によく飲むドリンクとして、ミネラルウォーターやコーヒー、緑茶などが挙げられます。
コーヒーや緑茶で水分補給、と聞くと、カフェインによる利尿作用や脱水症状を心配される方もいるかと思います。しかし、カフェインに耐性がある方なら、利尿頻度や量が著しく増える、ということは無いようです。
とはいえ、熱中症を防ぐうえでベストの選択肢といえるのは、体への吸収が早くて塩分補給も同時にできる、スポーツドリンクや経口補水液がベストでしょう。熱中症を防ぐために必要なミネラルなどの成分が含まれている商品もあって、真夏の暑さ対策にはぴったりです。
暑さ対策②塩分補給も忘れずに
上記でもすこし触れましたが、暑い時は水分だけでなく塩分の補給も非常に大切です。
汗を流すと水分だけでなく、塩分も体から流れ出てしまいます。たとえ水分をたっぷり採っていても、塩分が不足すると体内のバランスが崩れます。そんな大切な塩分ですが、水分補給をきちんと意識している人でも、塩分の補給はついおろそかになりがちです。
手軽に塩分補給するなら、塩タブレットがオススメ。スーパーやドラッグストアで簡単に購入可能です。似ている物で塩飴もありますが、暑い中で持ち歩いていると、溶けて食べづらくなってしまいます。
個包装タイプの物なら、ポケットに入れられて持ち運びも便利です。
スポーツドリンクからの摂取も勿論良いのですが、飲み過ぎは糖分の過剰摂取に繋がります。血液中に増えた糖を薄めるために喉が渇いて、更に飲んでしまう…なんてことの無いように注意してください。
※高血圧などで塩分を調整している方は、かかりつけの医師にご相談ください。
暑さ対策③:休憩時間中を涼しく過ごす工夫も大切
休憩時間の過ごしかたも、疎かにできません。
休憩時間中は、なるべく冷房の効いた日陰の場所で休んで、体への負担を和らげることが大切です。スペースが十分にある休憩所なら、体を横たえて仮眠するのもよいでしょう。
とはいえ、現場によっては休憩場所を選べないこともあります。時には冷房の効いていない休憩場所をあてがわれたりすることもあるかもしれません。
実際の現場では、屋外のテントの中で休むように指定されたことが何度もあります。冷房も効いておらず、日光も差し込むテントの中で疲れを取ることはなかなか難しいものがありました。
そこで、どんな休憩場所でも涼しく過ごせるように、携帯扇風機などのアイテムを使って自分で涼しさを保てるようにする工夫が必要になってきます。
ここからは、暑さ対策に役立つ便利グッズについて紹介していきます。
暑さ対策に効く便利グッズ3選
普段の体調管理や仕事中の栄養補給だけでなく、便利グッズに頼る手もあります。暑さ対策に効く便利グッズとして、人気・効果ともに高いグッズをご紹介します。
便利グッズ①:首をヒンヤリ冷やすネッククーラー
首には太い動脈が通っており、脳へと血を運んでいます。脳へ届けられる血液を冷やすことは、熱中症を防ぐうえでとても大切です。
大切な首元をヒンヤリと冷やすのに効率的なグッズとして、ネッククーラーがあります。
最近では、炎天下の中、このネッククーラーを首元に付けて働いている人を多く見かけるようになりました。熱中症対策をする上でとてもポピュラーなグッズといってよいでしょう。
実際に誘導する現場では手が塞がっている事が多いですが、ネッククーラーは首に巻くだけで効果が出るので非常に役立つそうです。
現場のルールにもよりますが、警備中でもこのネッククーラーを首に巻いて働いてもOKな場合もあります。もしも警備中に身につけるのがNGな場合は、休憩時間だけでも首元を冷やして、頭へのぼる血を冷やしましょう。
便利グッズ②:携帯扇風機
携帯扇風機と聞いて思い浮かべるのは、例えばアトラクションに並んでいる方々が持っているような、片手で持てる小型扇風機でしょうか。休憩中ならまだしも、扇風機片手に仕事をするわけにはいきません。手を使わないこと、業務に支障をきたさないことが重要になってきます。
ベルトファンを襟に付ければ、顔まわりを冷やすことが出来ます。メーカーによりますが、小型タイプを選べば邪魔になりませんし、重さも大体スマホ一台分です。
紐で首にぶら下げるタイプもありますが、動くと煩わしいですし、紐がどこかに引っかかったりすると事故に繋がりかねません。クリップなどで装着できるのが一番安全です。
高くて買えない!という方には、クールタオルがオススメ。屋外で使うなら、水に濡らすタイプがいいでショウ。大体1,000円前後で買える便利グッズデス。
便利グッズ③コンプレッションウェア
コンプレッションウェアとは、スポーツ選手や作業員に愛用されている肌着の一種で、吸水性と速乾性に優れているのが特徴です。かいた汗を吸収して発散する過程で体を冷やす機能があります。それだけでなく、身体にかかる負担やむくみの軽減、ケガの予防、姿勢強制などに効果的です。
夏に着るなら、接触冷感タイプや、消臭などの機能が付いたウェアがオススメです。
食べ物で熱中症を予防しよう!
普段の食事に気を付けることで、熱中症を予防することも重要です。まず基本として、食事は3食しっかり摂りましょう。食事を抜くことで栄養補給の機会を失い、熱中症に繋がることもあります。おにぎりやパンなど、簡単なもので良いので口に入れるよう心がけてください。
熱中症予防におススメの食べ物①トマト
トマトやキュウリ、ピーマンなどの夏野菜には、夏に不足しがちなカリウムやビタミンCが豊富に含まれています。特にトマトは「トマトが赤くなると医者が青くなる」言われるほど栄養豊富で、ビタミンAやビタミンCを摂るのにピッタリです。洗えばそのまま食べられるので、時間が無くても簡単に食べられます。
一緒に食べるなら、酢の物にするかマヨネーズをかけまショウ!
熱中症予防におススメの食べ物②豚肉
夏はアイスやそうめん、ビールなどが美味しい季節ですよね。これらには糖質が多く含まれており、沢山食べると糖質をエネルギーに変換するビタミンB1が不足してきます。ビタミンB1が不足すると、疲れやすくなったり食欲不振になり、夏バテに繋がってしまいます。
豚肉にはビタミンB1が豊富に含まれています。ビタミンB1の吸収を助けるアリシンが含まれている、玉ねぎやニラと一緒に食べるのがオススメです。
アリシンは熱に弱いですが、油と一緒に調理すれば問題ありまセン。それでも気になるなら、すりおろせば効率よく摂取できマス!
熱中症予防におススメの食べ物③梅干し
梅干しには、熱中症で失われるミネラルやクエン酸が豊富に含まれています。塩分が高いので、1日に1,2個ほど食べれば充分です。
そのまま食べたり、梅キュウリや炊き込みご飯にしたりと、お好きな食べ方を探してみてください。個包装の種なしタイプなら、休み時間に簡単に食べられます。
真夏の警備現場の注意点
蒸し暑い真夏の警備現場で働くうえで忘れられがちな注意点として、見逃すわけにはいかない重要なポイントがあります。
警備現場で夏を迎える前に意識しておきたい注意点について解説します。
注意点①:睡眠不足に注意
どんなに水分や塩分をしっかり補給しても、睡眠が不足している状態だと、熱中症にやられてしまうリスクがあります。睡眠不足では、体温調節機能が低下してしまうからです。
2011年の東日本大震災後、現地へボランティアへ向かうため夜中のバスで移動してきた人たちの間で熱中症を発症する人が相次ぎました。やはり、夜間の移動で良質な睡眠が取れず、体調に影響してしまったようです。
警備員として働くにあたっても、仕事中の暑さ対策はもちろん、仕事以外の時間も生活リズムを意識して、可能な限り規則正しい生活を送ることが暑さ対策にもつながります。
注意点②:直射日光を避けて、日陰にいる時間を多めに
直射日光を長時間浴びることは、熱中症に直結する大きなリスク要因です。太陽光のもたらす熱が体温を上昇させるだけでなく、紫外線を浴びることによって体力が消耗されます。結果として体温調節機能を弱めてしまうため、熱中症になるリスクを高めてしまいます。
もしも立哨警備などの際、立ち位置を数メートル単位でも移動するのが許される状況であれば、少しでも日陰寄りのポジションへ移動しましょう。
熱中症になった時の対処法
どんなに予防していても、熱中症になってしまうことはあります。実際に、過去3年の6~9月の3ヶ月間の死亡者数平均は約130人と、高い水準です。自分や周りの方が熱中症になった時に何をするべきなのか、対処法をご紹介します。
- 横になって身体を休ませる
熱中症になると血圧が下がり、脳にまわる血液が減少してしまいます。日陰で涼しい場所に移動し、横たわりましょう。足の下にタオルを重ねるなどして10㎝ほど高くすることで、血行が良くなり、脳に血液が行きわたるようになります。
- 身体を冷やす箇所もポイント!
可能であれば服を脱がして冷水をかけたり、保冷剤や濡れタオル、うちわなどでで身体を冷やします。特に、太い血管が通っている首やわきの下、足の付け根の内側などを重点的に冷やしましょう。
- 失われた水分と塩分を補給
今まで紹介してきたミネラルウォーターや経口補水液、塩タブレットで水分と塩分を補給しましょう。但し、吐き気があったり、自力で飲めないほど消耗している場合は、無理せず医療機関で点滴などの処置を受けてください。
まとめ:警備業務では体を壊さないことが何よりも大切!
警備業務は比較的高めの給料が設定されていることが多く、また生涯現役で働けるということもあって、ライフワークとして継続していくのにぴったりの仕事です。
とはいえ、体を壊してしまって働けなくなってしまっては元も子もありません。体の健康を保ちながら、警備員として長く活躍していくためにも、暑さ寒さへの正しい対策法を身につけて置くことが大切です。今回紹介した熱中症対策が充実した警備員ライフを送るお役に立てれば幸いです。