列車見張りの警備員とは?仕事内容や年収・試験の合格率を解説

橋を電車が走っている

駅のホームで電車を待っているとき、巨大広告ポスターの貼り換え工事を見たことがある人もいるのではないでしょうか。

よく見てみると、作業員の下に旗を持って周囲を警戒している人がいます。作業員の安全を見守っているのが「列車見張り員」と呼ばれている人です。

今回は「列車見張り員」にスポットを当て、詳しい仕事内容や資格の取得方法をご紹介します。

列車見張り員とは列車作業員を守る仕事

走っている電車

列車見張り員とは、線路内の工事や線路付近で工事をおこなう際、走行している列車が接近して来ないか安全確認をしながら見張る人を指します。

工事は列車が行き交う危険な中でおこなわれるので、「列車見張り員」の資格を持っている人しか配置されません。「列車見張り員」が集められなかった場合、工事そのものが中止となることもあります。

具体的な仕事内容

列車見張り員の具体的な仕事内容を、以下の3点にわけて解説します。

  • 主な活動場所
  • 現場の仕事例
  • 使用する道具の例

列車見張り員はどのような仕事をするのか、確認しましょう。

列車見張り員に関係する「鉄道警備員」について興味のある方は、下記の記事もあわせて読んでみてください。

主な活動場所

列車見張り員の活動場所は、下記のとおりです。

【列車見張り員の活動場所】

  • 鉄道路線の補修工事や点検作業
  • 駅舎の修繕
  • 高架橋の工事
  • 看板設置工事の線路脇 など

周囲の安全確保が最重要になるので、条件としては「列車が見やすく安全な場所」となります。ひとつの現場に対する活動期間は、規模により3ヶ月~1年とさまざまです。

現場の仕事例

列車見張り員の現場での仕事は、多岐にわたります。

【現場での仕事例】

  • スタンバイ
    工事現場の路線両脇で、列車のダイヤを確認しながらスタンバイする。運行管理部と連絡を取り、常に運行状況を気に掛ける。
  • 列車がきた場合
    列車がくる数分前になると、ほかの見張り員と連携を取り、トランシーバーやスピーカーなどで列車接近の旨を作業員に伝える。作業員は作業を中断し、安全確保のため線路脇に退避する。
  • 避難完了
    現場にいる全員の退避を確認でき次第、見張り員は持っている黄色い旗を掲げ、迫ってくる列車の運転手に合図を送る。合図を受けた運転手も、現場に合図で応える。
  • 列車の通過後
    列車が無事に通過し、再度安全確認を終えれば、作業再開の旨をアナウンスする。次の列車が接近するまでの時間を確認し、作業員へ伝える。

工事は列車が走行していない深夜帯におこなわれることが多いものの、場合によっては昼間実施されるケースもあります。作業に集中している作業員の安全確保を任されている見張り員の仕事は、常に命の危険と隣り合わせでおこなわれています。

【補足】万が一避難できない場合は?

緊急に何かが起こって退避が不可能となってしまった場合は、向かってくる列車の運転手にすぐ知らせなければなりません。運転手がわかるように、列車防護用具を使い(発煙筒や赤旗)列車を停止させます。

見張り員の行動は、すべて工事管理者の許可が必要です。基本的に、独断での移動も禁止されています。

使用する道具の例

列車見張り員が使用する道具は、下記のとおりです。

【列車見張り員が使用する道具例】

  • 列車ダイヤ
  • 時計(電波時計)
  • 笛・メガホン
  • セーフティーベスト
  • 赤ボールペン
  • アラーム機能付きタイマー
  • 列車防護用具 

列車防護用具とは、列車を停止させる際に使う道具です。主に、レール同士をショートさせて信号上では列車がいるように仕向ける「軌道短絡器」や「信号炎管」「赤旗」を指します。ほかにも、無線で列車停止の信号を送る「列車見張り員支援装置」も列車防護用具のひとつです。

実際に働く人の体験談

列車見張り員として働いている人の声を集めました。

列車見張り員のバイトしてた時て結構楽しかった
半日で終わった時もあったし
半日で一日分もらえるんだ!と思い
結構良かったなと
(引用元:X

とてもレアな光景を撮影できて、良かったですネ。
普段はこんな光景は夜間が多いですが、駅構内なので、運転できたのかもしれないですネ。
ちなみに、わたしは先頭に便乗している黄色の服を着ている列車見張り員の仕事をしております。
(引用元:X

今は列車接近を知らせてくれる装備なども支給されますが、トイレに行くのも厳しいことが多い、かなり過酷な仕事ですよ。なので、日当も高いのです。
というのが、JR 見張りの様子ですかね。数年前、会社から命令を受け講習に参加し、終了したものの、「冗談じゃない!。こんな仕事嫌だ!」で逃げ出した私です。
(引用元:Yahoo!知恵袋

列車見張り員には、「結構楽しくてよかった」「日当は高いものの過酷な仕事だった、こんな仕事嫌だと逃げ出した」といった口コミがありました。真逆の意見が出るのは、バイトや正職員など、雇用形態により任される仕事の責任の重さが違う可能性があるからと考えられます。

2番目の口コミは、列車見張り員の作業現場を撮影した人に対するコメントです。「列車見張り員は黄色の服を着て作業をする」という部分から、仕事姿のイメージが湧くでしょう。体験談も参考にすると、列車見張り員の仕事に就いた際のイメージ作りができます。

全国各地の警備求人を掲載する『ケイサーチ!』では、列車見張り員の求人情報もあります。この機会にぜひチェックしてみてください。

列車見張り員の資格取得には「列車見張り員講習」の受講が必要

本を読む人

列車見張り員は、「日本鉄道施設協会」または「鉄道電業安全協会」の主催で取得できる民間資格です。列車見張り員になるためには「列車見張り員講習」を受講し、検査や試験に合格して資格を取得します。

個人での直接申し込みができないため、所属している警備会社を経由しての申し込みが一般的です。

列車見張り員講習|試験内容や合格率

列車見張り員の資格は「施設資格試験」と「電気資格試験」に分かれており、どちらを受けるかによって認定会社が変わります。

今回は「施設資格試験」を受験する想定で、JR東日本より認定業務を委託されている、日本鉄道施設協会の内容を紹介します。

【受験資格】

列車見張り員の試験は、未経験の方でも受けられます。新規受験者は資格認定の申し込みをする際に、健康診断書のコピーが必要です。「医学適性検査」の基準に満たしていなければ、資格認定証が交付できません。

【講習の申し込み開始日】

講習開催の2ヶ月前の1日(土曜・日曜・祝日の場合は翌営業日)から申し込み受付が始まり、所属会社が申し込みをします。満席になった場合は、参加できません。申し込み前には書類の準備が必要か会社に確認をしましょう。

~申し込みに必要な書類~

  • 申込書
  • 定期健康診断のコピー
  • 払込受領証のコピー

【開催日程】

開催日程は日本鉄道施設協会の公式ホームページ」、または勤務会社で確認が可能です。講習会は、年に数回おこなわれます。

【講習内容】

講習期間は、2日間を予定しています。開催場所は受講の2ヶ月前に「日本鉄道施設協会のホームページ」で確認が可能です。講習から資格取得までの内容は以下のとおりです。

  • 保安講習会の受講
  • 実技訓練
  • 運的・健康面の適性検査
  • 学力検査
  • 実技検査

上記すべての項目を受験して合格すると、資格認定証を交付してもらえます。保安講習会では、使用する道具の使い方やダイヤの見方など、業務に必須な知識とスキルを学びます。

参照:JR東日本 [10条幹・列車見張り員] | 一般社団法人日本鉄道施設協会

【列車見張り員講習|合格難易度・合格率】

試験の難易度はやや低めなため、しっかり講義を受けて要点をおさえておけば、合格を狙えるでしょう。

【資格の有効期限・継続更新手続き】

資格の有効期限は1年となっており、継続するには継続認定が必要です。継続認定は「講習会・実技訓練・学力検査・実技検査・運転適性検査」を受けると交付されます。

列車見張り員の資格でできること

胸に手を当てている人

列車見張り員の資格でできる主なことは、以下の3つです。

  1. 重機誘導員
  2. 旅客誘導員
  3. 踏切監視員

各仕事内容について順番に解説します。

できること1:重機誘導員

重機誘導員は、線路内の工事で使用するクレーンやバックホウの誘導をおこなう仕事です。

重機の取り扱いは大事故につながる可能性もあるため、重機1台につき重機誘導員1名が配置されます。

高圧線や設備などの接触を防止し、重機が横転したときは列車防護の措置が取れるよう、常に警戒が必要な業務です。

できること2:旅客誘導員

旅客誘導員は、ホーム内での工事や、駅舎・エレベーター等の整備作業の際、旅客の誘導・安全確保を担います。

無資格者が勤務する場合もあります。ただし、緊急時に列車を停止できるのは「列車見張り員」の有資格者だけです。

できること3:踏切監視員

信号機器や通信機の配線工事などで、一時的に踏切の機能を停止させるケースがあります。停止させる場合、停止している遮断機や警告期の代わりに「踏切監視員」が必要です。

踏切を横断する通行人や車両の安全確保から誘導まで、踏切設備の代役を務めます。

列車見張り員の年収

年収と書かれている木のブロック

列車見張り員の年収は、会社や地域により200〜400万円と幅があります。下記の画像にあるように、列車見張り員の求人例を見てみましょう。

(※画像の求人はイメージです)

列車見張り員の求人広告

引用元:ケイサーチ!「全国・列車見張りの求人」

※画像の求人は掲載を終了している可能性がございます列車見張り員の求人広告

引用元:ケイサーチ!「全国・列車見張りの求人」

※画像の求人は掲載を終了している可能性がございます

正社員の場合、日給10,000〜13,000円ほどで設定している警備会社が多く見受けられます。日勤でひと月に22日勤務した場合、220,000〜286,000円ほどが月収額になる計算です。日勤や夜勤によっても給与が変わるのが、列車見張り員の特徴です。

列車見張り員の資格取得制度だけでなく、資格手当や昇給・賞与のある会社に就職できると、平均以上の月収を得られるでしょう。以下はアルバイトの場合の月収例となるため、参考にしてみてください。

アルバイトの場合の月収例

東京都にて列車見張り員のアルバイトをした場合の月収例を見てみましょう。

【東京都のA社に列車見張り員アルバイトで22日間勤務した場合(日勤)】

日給9,500円×22日=209,000円

日勤で22日間働いた場合の月収は、209,000円となりました。あわせて資格手当や通勤費が支給されるとしても、そこまで低い金額ではありません。会社によっては、最低日給を10,000~11,500円に設定しているところもあるので、興味のある方はいろいろな求人を比較してみましょう。

警備業で年収アップを狙いたい方は、以下の記事で収入を上げる3つの方法を解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

列車見張り員に向いている人の特徴3つ

腕組をしている警備員

列車見張り員に向いている人の特徴は、主に以下の3つです。

  1. 責任感のある人
  2. 忍耐力がある人
  3. 体力に自信がある人

それぞれの特徴について解説しますので、ご自身と照らしあわせながら読んでみてください。

《特徴1》責任感のある人

列車見張り員は、安全を確保するために非常に重要な役割を担う仕事のため、責任感が強い人に向いています。

列車の運行スケジュールや作業員の安全を守るためには、常に周囲の状況に目を光らせ、適切な判断を即座に下さなければなりません。列車が接近しているかどうかを適切に報告し、作業員が安全な場所に避難できる指示が求められます。

責任感がある人は、緊張感のある環境でも冷静に対応でき、安全を最優先に考えた行動が取れるため、列車見張り員の仕事に適していると言えるでしょう。

《特徴2》忍耐力がある人

列車見張り員は、長時間にわたる集中力と忍耐力が求められる職種です。鉄道工事やメンテナンスの際に列車の接近を監視し続ける必要があり、時には天候が厳しい状況下でも勤務を続けなければなりません。

忍耐力がある人であれば、単調で長時間に及ぶ業務を淡々とこなしつつ、必要な瞬間に迅速かつ正確な行動が可能です。

忍耐力のある人は、職務上の厳しい条件にも適応し、信頼される見張り員として活躍できるでしょう。

《特徴3》体力に自信がある人

列車見張り員の仕事には、体力が欠かせません。列車見張り員は長時間にわたる立ち仕事や、現場を頻繁に歩き回る行動が求められるため、身体的に負担の大きい職務です。

鉄道工事は夜間の実施が多いため、夜勤に対応できる体力と持久力が必要なうえ、季節や天候にかかわらず業務を遂行しなければなりません。

体力に自信がある人であれば、厳しい労働環境でも疲れにくく集中力を保てるため、事故やトラブルを未然に防ぎやすくなるでしょう。

列車見張り員になる方法

様々な色の色鉛筆

列車見張り員になるには、以下の手順を踏む必要があります。

  1. 鉄道会社or警備会社へ就業
  2. 資格取得
  3. 実務

列車見張り員の資格取得には、鉄道会社や警備会社に所属していることが条件です。これから列車見張りの仕事に従事したいと考える方は、未経験OKで募集している警備会社に勤め、働きながら資格を取得しましょう。

豊富な警備求人を掲載している『ケイサーチ!』では、未経験でも大丈夫な列車見張りの仕事を絞り込んで検索できます。勤務地やこだわり条件とあわせて、仕事探しに役立ててみてください。

列車見張り員に関するよくある疑問

Q&Aと書かれた箱

最後に、列車見張り員に関するよくある疑問について解説します。

  • 列車見張り員の資格の過去問はある?
  • 列車見張り員と関わりのある資格はある?
  • 事故に巻き込まれる可能性はある?

順番に見ていきましょう。

列車見張り員の資格の過去問はある?

A.列車見張り員の資格の過去問は、非公開となっています。しかし、一般社団法人日本鉄道施設協会のホームページで講習会に参加すると、試験合格のための対策ができます。

列車見張り員と関わりのある資格はある?

A.列車見張り員と関わりのある資格は、以下の2つが挙げられます。

  • 特殊列車見張り員
    列車見張り員のワンランク上の認定資格。線路の軌道保守工事・作業や鉄道会社が指定した一部の土木工事を担当する場合、必要となるもの。
  • 工事管理者
    線路内や線路付近で工事をおこなう際に必要な資格。列車見張り員として現場に行く場合、必ず「工事管理者」と連携を取る必要がある。資格は主に在来線と新幹線の2種類に分かれており、日本鉄道施設協会で取得可能。

関連資格の取得で、仕事の幅が広がる可能性があります。気になる人は、取得を目指すのがオススメです。

事故に巻き込まれる可能性はある?

A.列車見張り員は、事故に巻き込まれる可能性のある仕事です。

労働災害事例を見てみると、列車見張り員が事故で亡くなった事例が存在します。

  • 鉄道の枕木交換作業において通過中の列車と接触し死亡
  • 駅構内において、下り線のポイント(転てつ器)の不転換が発生した。輸送指令から調査を指示された見張り員1名とパート作業員2名が上り、線内を通りポイントに向かう途中、見張り員と作業員1名が列車に跳ねられた
  • 駅構内の線路点検作業中、列車見張り員をしていた被災者が、作業終了後に詰所へ戻るため駅構内の線路を横断中、接近してきた回送列車に接触された

列車見張り員に従事する際は、周囲の状況をよく確認して行動をしましょう。

引用元:鉄道・軌道業における死亡災害事例(1999-2020年
    鉄道の枕木交換作業において通過中の列車と接触し死亡

未経験でも資格を取得して列車見張り員を目指せる!

駅のホームに停車している電車

列車見張り員の仕事は、線路内や線路そばでの工事やメンテナンスの際に欠かせない重要な役割を担っています。

列車見張り員の仕事は「列車見張り員」という民間資格を取得していなければ就業できません。しかし、入社後に資格取得できる会社もあるため、未経験者でも求人を見てみるのがオススメです。

列車見張り員として活躍できるようになれば、1ランク上の「特殊列車見張り員」や「工事関係者」など、関連の資格を取得するのもよいでしょう。

『ケイサーチ!』では列車見張り員の求人を多数掲載しています。興味のある方はまずは求人検索から始めてみてはいかがでしょうか。

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橋を電車が走っている