警備の仕事をするには、特別な資格や経験は必要ありません。しかし、取得によってキャリアや年収アップにつながる資格があります。
そこで本記事では、警備業に関する資格のひとつ「施設警備2級」について詳しく解説します。施設警備2級を取得するメリットやデメリット、試験内容についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
施設警備2級とは警備業務の幅を広げられる資格
施設警備2級とは、警備業法にもとづく「警備業務検定」の一種で、未経験でも取得にチャレンジできる国家資格です。施設警備自体は資格がなくても従事できる仕事であるものの、施設警備2級の資格を持っていれば、警備員としての業務範囲はもちろん、キャリアの幅を広げられます。
資格取得には、警備業務の基本や警備関連の法令に関する知識、事故発生時の適切な応急措置などを身に付けなければなりません。
資格取得により待遇が向上したり、年収がアップしたりといったメリットが得られる可能性もあるため、気になる方は施設警備2級の取得に向けて動き出しましょう。
そもそも施設警備とは施設を守る仕事
施設警備とは、商業施設や工場・医療機関など、施設の屋内外の安全を確保する仕事です。4種類に分かれる警備のうち、施設警備は「1号警備」に該当します。
【警備員の種類】
- 1号警備:施設警備業務・巡回警備業務・保安警備業務・機械警備業務
- 2号警備:交通誘導・雑踏警備業務
- 3号警備:運搬警備業務
- 4号警備:身辺警備業務
施設警備は、さまざまな施設に常駐し、出入管理や巡回、開閉業務や緊急対応などの警備にあたっています。
施設警備の仕事内容 | ・出入り口の監視 ・訪問者のチェック ・巡回による異常の早期発見 ・防犯・防災設備の点検 ・緊急時の対応 など |
施設警備員の勤務場所 | ・ショッピングモール ・オフィスビル ・病院 ・工場 など |
学科試験勤務地は多種多様で多くの選択肢があるため、自分の希望にあわせた働き方も可能です。
施設警備1級と2級の違い
施設警備2級は、警備未経験でも受験できます。しかし1級は、2級の合格に加えて警備業務に1年以上従事していなければ、受験資格は得られません。
実務試験において、2級では一定基準以上の業務をこなす能力が求められます。1級の場合、高度な水準でこなすほか、業務管理や警備員管理といった管理者・指揮者としてのノウハウも問われます。
学科試験では、2級の試験範囲に加えて、対象施設における保安業務や警備計画書にもとづく警備業務など、より広く深い知識が求められる点も大きな違いです。
東京都で施設警備をするなら「三種の神器」を取得しよう
東京都で施設警備として就業を考えている人は「三種の神器」の取得がオススメです。三種の神器とは、東京都内の警備会社で優遇されることが多い、重要な資格を指します。
【施設警備で有利になる三種の神器】
- 自衛消防技術認定
東京都限定の資格。東京都火災予防条例にもとづいて実施される自衛消防技術試験に合格することで取得できる
- 防災センター要員・自衛消防業務講習
火災や地震などの災害発生時に、防災センターや自衛消防組織の要員として必要とされる、総合的な対応要領を学ぶ講習。「防災センター要員」は東京都限定の資格 - 上級救命講習
普通救命講習の内容に加えて、傷病者の管理法や手当の要領、搬送法などを学ぶ講習
東京都以外でも自衛消防業務講習が必要なケースもあるため、警備業に就く際は事前にチェックしておきましょう。
三種の神器を取得すると、警備員としての信頼性と実務能力が向上し、東京都内の警備業務で高い評価を得られます。三種の神器については下記記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
施設警備2級の試験内容
施設警備2級の試験は、警備業務に必要な知識と技能を評価するために実施されます。
試験内容は、大きく分けて学科試験と実技試験の2つです。気になる合格率や難易度についても見てみましょう。
学科・実技試験
はじめに、施設警備2級の学科・実技試験について詳しく解説します。
学科試験
学科試験では、警備業法や関係法令、警備業務の基本的な知識に関する問題が出題されます。20問60分のテストとなっており、出題内容は以下のとおりです。
- 警備業務に関する基本的な事項
- 法令に関すること
- 警備業務対象施設における保安に関すること
- 警備業務対象施設の破壊等の事故が発生した場合における応急の措置に関すること
90点以上が合格ライン(※)のため、過去問を解きなおす、講習時の不明点は事前に解決するといった対策をしましょう。
(※)参考:公安委員会が実施する直接検定の学科試験及び実技試験|警視庁
実技試験
実技試験では、実際の警備業務で必要とされる技能が評価されます。以下のような内容で実務試験がおこなわれます。
- 警備業務対象施設における保安に関すること
- 警備業務対象施設の破壊等の事故が発生した場合における応急の措置に関すること
実技試験は、シナリオにもとづいた実際の場面を想定し、受験者がどのように対処するかを見て評価するため、対応力や判断力が試されます。実施試験は減点方式で、学科と同じように90点以上が合格ラインです。
合格率・難易度
施設警備2級の資格取得については、公安委員会が開催している「直接検定に合格するか」「特別講習を受けるか」の2つの方法があります。それぞれのパターンについて見ていきましょう。
【補足】
- 直接検定:事前の講習を受けることなく、試験に直接挑む方法。すでに警備業務に従事しており、実務経験が豊富な人に向いている
- 特別講習:事前に一定期間の講習を受け、施設警備2級の試験に挑む方法。警備業務の経験が少ない、または未経験の人に向いている
直接検定
直接検定の合格ラインは9割とかなり高いハードルとなっています。合格率に明確なデータはありませんが、低い数字が予想されるでしょう。
未経験者が資格取得を目指す場合、未経験者向けの特別講習の方法がオススメです。
特別講習
特別講習の合格率は、2022年分で76.9%、再試験の場合では、63.4%です。(※)
特別検定は事前に一定期間の講習を受けるもののため、直接検定よりも高い合格率と見込まれるでしょう。
(※)参考:合格率データ|一般社団法人 警備員特別講習事業センター
日程・費用
2024年の施設警備2級の日程や費用は、下記のように種類により異なります。
日程 | 費用(税込) | |
直接検定 | 学科試験:7月6日(土) | 16,000円 |
実技試験:10月5日(土) ※東京都の場合 | ||
特別講習(未経験者向け) | 2024年8月17日(土)~8月22日(木) ※研修センターふじの(神奈川県の場合) | 79,200円 |
特別講習(警備員向け) | 7月25日(木)〜26日(金) 8月29日(木)〜30日(金) ※東京都の場合 | 33,000円 |
東京や大阪、福岡など開催日程は地域によって異なるため、確認先も変わります。
- 直接検定の場合・・・居住地の「警察本部」で確認
- 講習受講の場合・・・居住地の「警備業協会」で確認
また、検定の受付期間が決まっているため、受験の場合は締め切り前に必ず申し込みましょう。
施設警備2級の申し込み方法
施設警備2級への申し込みは、以下の手順でおこないます。
【直接検定を受ける場合】
- 各警察本部の申し込み手順に沿って申し込み
- 申請書類の提出と手数料の納付
- 受検票の交付
【特別講習を受ける場合】
- 一般社団法人警備員特別講習事業センターの申し込み窓口より問い合わせ
- 手数料の支払い
警備員向けの特別講習を受ける場合、ほとんどは所属する会社を通じての手続きが必要となります。まったくの未経験から資格を取得する際、未経験者を対象にした講習会「警備員になろうとする者の講習」を受講すると、資格の取得が可能です。
施設警備2級を取得する3つのメリット
施設警備2級の資格取得は、今後、警備業務に従事するにあたって多くのメリットが得られます。具体的なメリットについて解説しますので、確認してみましょう。
メリット1: 待遇の向上
施設警備2級を取得すると、警備員として待遇の向上を期待できます。資格の保有自体が専門的な知識と技能を有している証明となり、警備会社や施設管理会社からの評価が高まるためです。
資格があるとチームリーダーや現場責任者としての役割を担え、さらには管理職としての経験が積めるケースもあるため、今後のキャリアパスが広がります。
施設警備2級を取得すると、警備業界における自分の市場価値を高められ、求人応募の際にもほかの候補者と差別化が図れるでしょう。資格取得は、自身のスキルアップと同時に、待遇の向上を実現する有力な手段です。
メリット2: 年収アップ
施設警備2級を取得すると、年収アップが期待できます。多くの警備会社や施設管理会社が資格保有者に対し、資格手当などの優遇措置を取っているからです。
【資格取得により日当800円が上乗せされる場合(ひと月25日勤務)】
- 1ヶ月の給与:+20,000円
- 1年間の給与:+240,000円
資格手当が毎月の給与に上乗せされる場合、年間を通じて大きな収入増加が見込めます。より高度な業務や責任のあるポジションに就くチャンスが増えることから、基本給与の増加や各種手当、ボーナスの増額も期待できるでしょう。
転職により警備業界に就職する場合も、資格保有者は需要が高く、よりよい条件での転職が可能です。現職よりも高い給与を提示する企業への転職が実現できれば、年収アップも夢ではありません。
メリット3:信頼性向上
施設警備2級の取得は、警備業務に従事するうえで、信頼性向上につながります。資格取得には一定の学習と実技訓練が必要であり、地道に努力できる人であるという印象を周りに与えられるからです。
資格取得を通して警備への理解が深まり、より真摯な姿勢で業務に励むと、プロフェッショナルとしての誠実さの証明につながります。周りからの信頼性が向上すると、勤務先から重要な役割や責任ある業務を任されることも増えるでしょう。
以下の記事では、空港警備や貴重品運搬時の警備などを詳しく紹介しているので、あわせて読んでみてください。
施設警備2級を取得する2つのデメリット
施設警備2級の取得には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットもあります。
2つのデメリットを申し込み前に確認しておくと、「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを防げます。
デメリット1:試験に費用がかかる
知っておくべきデメリットとしては、試験に費用がかかることです。試験を受けるためには受検料が必要であり、金額的にも軽いものではありません。
【施設警備2級の受検費用(税込)】
- 直接検定:16,000円
- 特別講習(未経験):79,200円
- 特別講習(警備員向け):33,000円
すでに警備会社に所属しており、資格取得促進のために、受検費用は会社が負担してくれる場合もあるでしょう。試験に合格できなかった場合、再度受検するための費用が必要になり、さらに受検者本人が実費で負担しなければならないケースもあります。
施設警備2級を取得するためには一定の費用がかかり、経済的な負担が発生することは避けられません。資格取得のメリットを考慮しつつも、費用がかかる点について十分に理解しておきましょう。
デメリット2:勉強する時間がかかる
施設警備2級を取得するためには、勉強する時間が必要となることも大きなデメリットのひとつです。
試験に合格するためには、警備業務に関する法律や規則、実際の業務に必要な知識や技術をしっかりと理解しなければならず、多くの勉強時間を確保する必要があります。とくに、仕事をしながら資格取得を目指す場合、日常の業務と勉強の両立は大きな課題となるでしょう。
特別講習を受ける場合は、一定期間、講習への出席が必要になるため時間も確保しなければなりません。講習のスケジュールが仕事と重なった場合は、調整も必要です。
施設警備2級の資格取得に向けては、勉強時間を確保するための計画や努力が欠かせない点を視野に入れましょう。
施設警備2級取得のための効率的な勉強方法
施設警備2級を取得するための効率的な勉強方法を、3つ紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
直接検定・教本で勉強する
施設警備2級の資格を直接検定で取得するためには、市販の教本を使って独学で試験対策が必要です。はじめて施設警備の資格勉強をする際は、警備業務に関する基本的な法律や規則、実務知識を体系的に学べる教本を選びましょう。
本番の学科試験は、問題集の選択肢を少し変えて出題されるものが多いため、過去問や模擬試験を繰り返し解くのも対策になります。自己管理が求められるものの、自分のペースで学習を進められる方法です。
学科の勉強は3回以上繰り返す
施設警備2級の学科試験に合格するためには、学科の勉強を少なくとも3回以上繰り返しましょう。
- 教本を通読して全体の内容を把握する
- 重要なポイントや理解が浅い部分を重点的に復習する
- 過去問や模擬試験を解きながら実際の試験形式に慣れる
反復学習をすることで、知識の定着が図られ、試験本番でも自信を持って回答できるようになります。
問題を解く際は自分が出題者と仮定して「いま問いている問題をベースに新たな問題を作るとしたら、どのように変更点を加えるか」を考えるのもよいでしょう。本番を想定した練習が重要です。
実技試験は大筋の回答を目指す
施設警備2級の実技試験は、各実技試験開始前に提示される「状況想定文」を読み、持ち点100点から採点基準にしたがって減点される方式で判定されます。さまざまなシーンで伝えるべき文言や動作をおこない、適切にできるかを見られるものです。
文言に関しては、一言一句完璧にする必要はなく、大筋を間違えなければ問題ありません。実技試験よりも学科試験に重点を置いた勉強が大切です。
施設警備2級に関するよくある疑問
最後に、施設警備2級に関するよくある疑問に回答します。内容に目を通し、施設警備2級という資格について理解を深めましょう。
合格発表はいつわかりますか?
A.結果発表は、修了考査を実施した当月または翌月の10〜15日前後です。
発表は受講番号(修了考査の際のゼッケン番号)での掲示となるため、あらかじめ番号を確認しておきましょう。合格者には修了証明書、不合格者には受講証明書が発行されます。
過去問にはどういう問題がありますか?
A.出題される内容は、主に下記のとおりです。
- 警備業法
- 遺失物法軽犯罪法などの法令
- 出入管理の方法
- 火災や事故発生時の応急対応 など
詳しくは施設警備2級の教本や問題集に掲載されていますので、参考書を繰り返し解くのが試験対策として効果的です。
施設警備2級は難しいですか?
A.施設警備2級の難易度は、それほど高いものではありません。
特別講習の場合、合格率は6~8割と高めです。出題傾向をつかんで、しっかりと対策をすれば合格できる試験といえるでしょう。
試験に落ちた場合どうなりますか?
A.来年受検しましょう。
施設警備員の資格が受けられるのは生涯一度きりというわけではないため、落ちてしまっても来年チャンスが巡ってきます。二度目の試験も同じ結果にならないように、1年かけて受験対策をしっかりとしておくのがオススメです。
施設警備業務2級を取得してキャリアアップを目指そう!
施設警備2級とは、未経験でも取得可能な警備業務の幅を広げられる貴重な国家資格です。施設警備の試験内容は学科と実技にわかれ、実施の日程も居住地によって異なります。
受験方法にも「直接検定」と「特別講習」があるため、現在の自分の状況を考え、どのように取得するべきかを考えてみましょう。
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